読書感想文:宮下奈都「羊と鋼の森」(文春文庫)

最近ピアノについて勉強する機会があり、リファレンスのひとつとして読んだのが宮下奈都さんの「羊と鋼の森」です。

高校で偶然の凄腕ピアノ調律師との出会いを経て、自らも調律師となった青年・外村の成長の物語ですが、同じ職場に迎え入れてくれた凄腕ピアノ調律師・板鳥さんや指導係的な柳さん、元ピアニストの調律師・秋野さんとの会話や、ふたごのピアニストとの出会いなど、静かに物語は進みますが読んでて吸い込まれていくように惹きつけられていきます。主人公・外村はピアノの音に故郷の山の森を感じますが、この本は読んでて音が聞こえてくるよう。素敵な一冊です。

宮下奈都さん作品は以前に「スコーレNo.4」を紹介したこともありますが、物静かな中に感情の色がきちんと渦巻いているのがいいですね。

読後にその勢いで映画版も観ました。Amzonプライム・ビデオ、便利(笑)。

原作と映画版の大きな違いは、実姉妹の上白石萌音さんと上白石萌歌さんが演じた和音と由仁の姉妹がふたごかどうか曖昧になっていることで、外村とその弟との関係、和音と由仁の関係性の外村の受け止め方が変わっているところ。原作を読んだ直後なだけに、その違いばかりが目についてしまいましたが、ふたごのキャスティングって難しいだろうし、チャレンジな部分でもあるのかな、なんて思いました。

映画全体としては、ピアノの音色も森の景色も楽しめて豊かな気持ちになれるし(そもそも北海道の雪景色がいいですよね)、ピアノ自体がそうですが、こころの豊かさみたいなものを感じるのにいい映画だなって思えることでしょう。